Divingbeetlesのブログ

水辺の生き物について綴っています。

ハイイロゲンゴロウ繁殖チャレンジ ~ぬるま湯での産卵~

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街中のコンクリート固めの池でも、干上がる水たまりでも、日光に照りつけられた風呂の湯みたいな水温の田んぼでも力強く生きていける能力を持つゲンゴロウがいます。

それがこちら。

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ハイイロゲンゴロウ

昨年8月に田んぼで採集してきたペアが無事に冬を越せたので、繁殖に挑戦してみました。

 

しかし、一つ困ったことがありました。

 

ネットに繁殖情報がほとんど載っていないのです。

(私の調べ方が悪いのかもしれない‥‥(T . T))

 

 

mushinavi.com

こちらの方の記事は産卵までするものの、孵化せずといったところ。

 

やはり難しいみたいです。

 

ハイイロゲンゴロウ6月から9月までの梅雨から秋口にかけての期間産卵シーズンに入ります。

私が実際に野生の幼虫を見たのは9月。

 

稲刈りを終えた田んぼにできた数々の水たまりにかなりの数が密集していました。

幼虫も干上がる環境に棲息しているようです。

 

ハイイロゲンゴロウかなり移動性の高いゲンゴロウです。

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雨上がりに出来上がった水たまりにも急に出現し、干上がる頃にはいなくなっているような昆虫です。

 

以上のことから、1つの推測に基づいて飼育しようと考えました。

それは

 

一つの場所にとどまらず、新しい環境を転々とさせないと産卵しないのではないか。

 

そこで、

気温も上がって活動が活発になる春から水槽を転々とさせました。

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冬眠期間中は金魚鉢でペアの2匹のみで飼育。

 

3月を迎え、気温がだいぶ上がったタイミングで第一回目の引っ越し。

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飼育してい25匹ほどのヒメゲンゴロウ達と一緒に飼育します。

ここで気をつけたいのが餌をなるべく切らさないこと。

混泳する場合、サイズ感や泳ぎのうまさの違いから

空腹時は捕食されます。

 

www.moi-divingbeetles.com

 

野生では、

水深のある全壁コンクリート防火水槽の水面付近に湧いたボウフラを積極的に捕食する

ということもあって、他のゲンゴロウよりもかなり泳ぎと捕獲はうまいです。

 

 

私がいつもツイッターで水辺のことについて勉強させていただいている

偉大な方のツイートですが、引用リツイートされているURLの論文より

ハイイロゲンゴロウのメスは

24時間で200匹ものボウフラを捕食することができる能力を持っているそうです。

そら、腹減ったら捕食圧かかるわな。*1

 

そして迎えた6月。

 

ここで私の方が引っ越しして環境が変わったこともあって、

ヒメゲンゴロウとハイイロゲンゴロウ水槽を一度空にして新たに水槽をリセットしました。

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これを含めて引っ越し2回目。

 

しかしながら

全く交尾しません。

 

今年は6月は例年よりも気温低めであり、2年ぶりにまともに雨が降った梅雨ということもあって温度が上がらなかったことが理由だったのかも…。

 

そして、迎えた6月18日、

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ついに交尾しました!!!

 

雨が上がって、湿度高めで気温が30度を上回り、屋外飼育水槽の水温が28度以上になったときでした。

 

高温に強いゲンゴロウということもあって、ある程度の高水温であることが産卵条件なのかもしれません。

 

そして、ここでハプニング。

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クロゲンゴロウの飼育容器からボウフラが大量に湧きました。

見づらいですが、よく見るとボウフラいます。

 

クロゲンが食べてくれると思い、1日放置してみたのですが、ボウフラの数がほとんど変わらず……。

サイズの小さすぎるボウフラは見落としがちなのかもしれません。

 

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これが全て蚊になってはまずいので、すぐさまペアでハイイロゲンゴロウを投入。

結果、2日でボウフラを全て駆逐してくれました。

 

そして、ペアでの時間をより長くするためにもまたも2匹のみで隔離。

そして迎えた7月8日。

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ついに!!

産卵してくれました!!!!

 

底にばらまく形で産卵するみたいです。

この時の水温は余裕の34度超えのほぼぬるま湯状態。

3月からここまでの飼育容器の引っ越し回数は4回。

引っ越しに意味があったのかどうかは確証は得らえませんが

 

●水辺が干上がって次の環境へ移ったという疑似体験

●産卵に適した高水温

 

この2つが要因であったのであれば推測通りかもしれません。

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すぐに卵を隔離。

 

しかしながら

その喜びも束の間。

 

3日後には卵が溶けてなくなるんです。

 

正確には、2日後には卵にカビが生えて、3日後にはバラバラになってしまいます。

 

隔離した卵がカビてしまうのは初めての経験ではありませんが

産卵した全ての卵にカビが生えてダメになってしまったことは今までありませんでした。

雌は最初に産卵した日から、だいたい1日4~5個、

多い時で10個近くの卵を産みます。

 

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日光に当たり続けている高水温の飼育容器だと良くないと思い

別容器に卵を移して、室内に置いて孵化を待ちました。

 

しかし、これもダメ。全てカビました。

 

対策として、この時期は水質が悪化しやすいので、屋外の大き目の別容器に移して

水替えは2日に1度行いました。

4日目まではもちましたが、これもダメ。カビてバラバラに消えていきます。

 

 

最終手段ですが

別容器に移す必要はないかもしれないと思い、

親がいる容器内で産んだ卵を永遠放置。

水替えは1日ごとに行いましたが、これもダメ。

 

親が卵を食べてしまうのか、それとも底を重点的に泳ぎまくるので

親の成虫の脚が当たって卵がボロボロになってしまうのか。

5日経つと卵の姿はありませんでした。

 

ほなどうしたらええねん!!!!

 

そう悩んでいる間に

メスが落ちました。

 

何というか、産卵までは良かったのですが、ここから全く孵化しないのは

初めての経験でどうしたらいいかわからない状態でした。

 

ひとまず、頑張ってくれたメスよ、ありがとう。

おかげで素晴らしい経験を積むことができました。

残されたオスも最後まで大切に飼育します。

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まだ産卵シーズンなので、野生のハイイロゲンゴロウでも

観察に出かけようかと思います。

 

身近ですが、繁殖はかなり難易度の高いゲンゴロウでした。

いやー、難しい。

 

 

 

*1:+_+